膿 皮 症
  (ノウヒショウ)
  皮膚細菌感染症
                                 
 
 人と動物の生活環境には細菌・かび・ウイルス・寄生虫など
生体に有害・無害・有益の微生物が充満しているのが現実です
動物に有害な細菌が皮膚に感染増殖し病的状態を膿皮症と呼びます

 バリア構造
物理的バリア   皮膚の表面に細菌の増殖を抑制する薄い被膜で覆われ
PH (水素イオン濃度)は弱酸性で細菌の増殖抑制作用があるがこの被膜の
厚さ・濃度が不充分な場合細菌の増殖抑制作用が働かず細菌の増殖で皮膚病となる
機能的バリア    通常細菌免疫を指している免疫機構の不完全な状態 
 細菌感染に対する免疫システムの不完全が主な原因で細菌の増殖を抑制
すべき条件が未熟か欠除などの欠陥があり細菌感染増殖を可能にする
動物体内の免疫機構の非正常化状態が膿皮症を引き起こす条件となる
免疫学的には免疫グロブリン(免疫抗体)が感染細菌と結合して細菌の増殖を
抑制または死滅させる機能がある物質の生産・濃度・分布に異状が発生し
これら幾つかの条件が組み合わされ感染・増殖・悪化で膿皮症が発生する

膿皮症の分類
 表層性膿皮症  皮膚の表面に細菌の感染増殖で生じる皮膚病
  深層性膿皮症  皮膚の皮下深層に細菌感染で生じる皮膚病
医原性膿皮症  医療に原因する細菌感染に因る皮膚病
   免疫不全性膿皮症  個体の免疫機能低下に因る細菌感染の皮膚病
寄生虫性膿皮症  寄生虫(毛包虫)と細菌感染の重複性皮膚病
アレルギー性膿皮症  アレルギー体質と細菌感染の重複性皮膚病
胼胝性膿皮症  胼胝(ベンチ)の中層又は深部に細菌感染の重複性皮膚病
膿皮症の検査・診断
稟告・視診的診断  臨床経験に基づく視覚と聞き取りによる診断
理学的診断   患部材料の顕微鏡検査による診断
生学物的診断   患部材料の細菌培養による診断
             血液中に細菌免疫グロブリンがあるか血液分析
薬物学的診断   患部細菌の抗薬剤耐性検査による診断
(感受性デイスク検査と呼ばれている)
治療指針
やみくもに抗生剤の投与は好ましい方法ではない
どのような細菌が病原菌か ?
どの抗生剤に抵抗力を持っているか ?
どの抗生剤に感受性(効力)を持っているか ?
どの抗生剤が最高に効力を発揮出来るか ?
治療薬剤が検査結果を基に選ばれているか ?
治療期間が満足するに充分な日数を満たしているか ?
免疫補強に充分な検査結果が出ているか ?
合併・重複疾患の平行治療が満足しているか ?
以上が治療の基礎条件と成っている
 
以下の臨床写真を参考に 
 
青線枠の画像をクリックすればリンクします
 
 

(1)  表層性膿皮症
皮膚表面に広域の細菌感染がある
シャンプーにより感染・拡大の恐れがある
感受性検査して最低2カ月以上の治療が必要

(2)  医原性膿皮症
ステロイドの長期投与の結果・皮膚面は糜爛
漿液の過剰分泌で細菌増殖が著しい
免疫能低下・肝機能低下治癒に3カ月を掛けた

(3) 表層性膿皮症
毛包・汗腺・皮脂腺単位に細菌の感染
剪毛(毛を刈り取る)しないと細部の病変が
観察できない・洗剤で皮膚バリア破壊による

(4) 深層性膿皮症
皮膚層の下部組織に細菌感染で酸素が無いか
少なくても増殖する特異な細菌群感染・増殖
診断と治療方法に工夫が必要な皮膚感染症

(5)   寄生虫性膿皮症
皮膚寄生虫の毛包虫の感染増殖して更に
細菌感染が併発した場合・毛包・皮脂腺
汗腺の化膿炎症像が膿皮症の外観を
見せるので検査は丁寧に実施して診断
治療は化膿症は容易・毛包虫は長期を要す 

(6) 胼胝性膿皮症

 皮膚のタコで表皮の肥厚が原因
始め表層に細菌感染が成立
放置しておくと細菌感染が深部に侵入し
タコの深部皮下組織に化膿が蔓延するので
診断が付き次第・外科的に切除が効果的

(7) 免疫不全医原性膿皮症
動物個体の免疫機構の低下が主な原因
細菌免疫の応答が不完全の時に発生
不完全細菌免疫で乾燥性の小斑性痂皮
不特定の部位に継続的に発生
抗生剤とワクチンの長期療法が効果的

 

      (8)   免疫不全性膿皮症

不完全細菌免疫で小斑性の薄い痂皮の形成
何らかの治療が過去に有った場合に発生
疾患の程度は軽度で図(7) より良性
患畜由来の細菌からの死菌ワクチンの
継続的(4-5日間隔)な長期治療が良い 


(9) 感受性デイスク検査
患畜の細菌感染材料を培養し倍地に塗布
抗生剤を含んだ濾紙を配置して培養する
一定時間後病原細菌の増殖阻止円を計測し
どの薬剤が効果が有るかの検査方法
図では中央の薬が有効で他は効果が無い


 (10)  死菌ワクチン

化膿を誘発する細菌は多くの種類があり
同系統の菌でも抗生剤に対する抵抗力に差が有る
図9の様に培養した細菌をかき集め殺菌する
此れが死菌ワクチンとよばれる
薄く希釈して注射し・免疫を増強する

(11) 免疫不全性膿皮症
細菌アレルギー + ハウスダストアレルギー
の患犬に長期注射して免疫を高めると
細菌感染が起きても大事に至らず
軽く・短期間に治癒した症例 
細菌感染体質の患犬にシャンプーをすると
シャンプーの3ー4日後に病状は更らに悪化する
 
 (12)  ワクチン療法
死菌ワクチンを長期に投与して細菌免疫を
順次高めると感染・痂皮の形成が少なく
色素沈着の小班を形成するが通常の
膿皮症に発展する事は極めて少ない
抗生剤の投与を必要とせず動物の健康維持に
良く、シャンプー後にも発病はコントロールする
 
看護・治療の要点

細菌の生存・増殖には湿度が必要で、逆に乾燥に弱いから湿り気は禁忌
シャンプーは皮膚バリアを破壊し湿り気を与え、新たな化膿病面を増やす事になる
感染細菌を完全に殺す抗生剤を感受性デイスク検査 で選定してから投与する
検査無しでの抗生剤投与は、暗闇に鉄砲を撃つようで治癒の確率は極めて悪い
一度抗生剤の投与を始めたならば、完全に治った様に見えても更に一定期間の投与が必要
早目に抗生剤の投与を中止すれば必ず再発があり、治療期間は更に延長する事になる
膿皮症は単純に考えないで、獣医師の指示を守り適切な治療の続行が大切
慢性の膿皮症では感染細菌の交替があるので感受性デイスク検査 を定期的に実施して
常に最高の効果有る抗生剤の投与を心掛ける(細菌は交替し・薬に抵抗力を持つ)こと
免疫学的治療(死菌ワクチン)で免疫を高める事が根本的によい事になる
重複膿皮症が有るので 酵母・カビ・寄生虫・医原性・ホルモン・免疫の付随疾患に用心
詳細な事柄は掛かり付けの動物病院で相談して下さい
 
 


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